【解説・神経経路】聴覚の伝導路

ニューロリハビリテーション

.

聴覚の伝導路について知りたいな

.

こんな人のための記事です。

.

ときとして療法士は脳卒中を始めとした神経に障害を負った方に対して、学習を促すことで生活を支援します。

神経経路に対する理解を深めることは、病態に応じた学習の促し方をより良いものにしてくれることでしょう。

.

とは言え、神経経路は多数存在し、その機能や走行を覚えるにも一苦労です。

.

恥ずかしながら学生時代の私は錐体路と錐体外路という言葉以外、それ以上の詳細な分類も機能も走行も理解していませんでした

.

そんな訳でこの記事は、神経経路の解説として

聴覚の伝導路

に関してまとめました。

.

特殊感覚とは何か?

聴覚の伝導路の解説の前に特殊感覚について確認しましょう

.

聴覚は感覚の中でも特殊感覚に分類されます。

特殊感覚には以下のものがあります。

視覚

聴覚

前庭覚

味覚

嗅覚

.

特殊感覚とは、身体の中で特定の場所にのみ存在する感覚器によって感知される感覚情報のことを指します。

つまり上記の特殊感覚は身体の中で以下の場所に存在する感覚器によってのみ感じることが出来ます。

視覚 … 眼

聴覚 … 耳

前庭覚 … 耳

味覚 … 口腔(舌や軟口蓋)

嗅覚 … 鼻

加えて特殊感覚の感覚器は全て頭部に存在するのも特徴ですね♪

.

これに対して体性感覚は身体の様々な場所に感覚器が存在します。

表在覚(触覚や圧覚など) … 皮膚など(皮膚は身体中を覆っている)

深部覚(意識に上らない固有感覚や位置覚など) … 筋・腱・関節包など

.

聴覚情報は何を感知すると伝わるか?

聴覚情報は何を感知すると伝わるかと言うと、それは

振動

です。

.

耳に届く振動が刺激となって、

音の大小(振幅)

音の高低(周波数)

などを知ることが可能となります。

つまり「音を聴く」ことが可能となります。

.

聴覚情報が伝わる順番

聴覚情報は以下の順番で大脳皮質の聴覚野(=ブロードマン・エリアの41野・42野、横側頭回)へと伝わります。

.

外耳道

…….

鼓膜

…….

ツチ骨

…….

キヌタ骨

…….

アブミ骨(ツチ骨 + キヌタ骨 + アブミ骨 を耳小骨と呼び、音の振動の圧力はこの耳小骨を伝わる間に鼓膜で受けた時の20~30倍に増幅されると言われている)

…….

蝸牛

…….

蝸牛内の基底膜上にあるコルチ器(=ラセン器)の有毛細胞(これが音の受容器)

…….

双極型ニューロンであるラセン神経節の末梢枝(ここから第1次ニューロン)

…….

ラセン神経節

…….

ラセン神経節の中枢枝

…….

ラセン神経節の中枢枝のうち、一部は腹側蝸牛神経核に接続し、残りは背側蝸牛神経核に接続する(ここから第2次ニューロン)

…….

腹側蝸牛神経核、背側蝸牛神経核から出る神経線維はいずれも一部は感覚入力されたのと同側の台形体核に接続し、残りは感覚入力されたのと反対側の台形体核に接続する(ここから第3次ニューロン)

…….

台形体核から出た神経線維は外側毛帯を通過する

…….

上オリーブ核(ここから第4次ニューロン)(ただし台形体核から出た一部の神経線維は上オリーブ核に接続せずに上行して外側毛帯核、下丘核、視床・内側膝状体にダイレクトに接続する)

…….

外側毛帯核(ここから第5次ニューロン)(外側毛帯核に接続する一部の神経線維は上オリーブ核から出たもので、残りは台形体核から出た神経線維で上オリーブ核を経由せずダイレクトに外側毛帯核に接続するもの)

…….

下丘核(ここから第6次ニューロン)(下丘核に接続する一部の神経線維は外側毛帯核から出たもので、残りは台形体核から出た神経線維で上オリーブ核・外側毛帯核を経由せずダイレクトに下丘核に接続するもの)

…….

下丘核から出る一部の神経線維は上行して視床・内側膝状体に接続し、残りは交連線維となってそれまで上行してきたのとは反対側の下丘核に接続する

…….

下丘腕(下丘核から視床・内側膝状体に向けて上行する神経線維と台形体核からダイレクトに視床・内側膝状体に向けて上行する神経線維の束)

…….

視床・内側膝状体(medial geniculate nucleus:MGN)(ここから第7次ニューロン)(視床・内側膝状体に接続する一部の神経線維は下丘核から出たもので、残りは台形体核から出た神経線維で上オリーブ核・外側毛帯核・下丘核を経由せずダイレクトに視床・内側膝状体に接続するもの)

…….

聴放線

…….

聴覚野(=ブロードマン・エリアの41野・42野、横側頭回)

.

経路中、台形体核から視床・内側膝状体の間に存在する神経核をバイパスすることも多いので聴覚の伝導路においてはどれが第何次ニューロンかはあまり意味がありません♪

.

【図】聴覚の伝導路

図中の番号の解説

① 視床

② 聴覚野(=ブロードマン・エリアの41野・42野、横側頭回)

③ 視床・内側膝状体(medial geniculate nucleus:MGN)

④ 聴放線

⑤ 下丘腕

⑥ 交連線維(下丘核から出た神経線維が反対側の下丘核に接続する)

⑦ 下丘核

⑧ 外側毛帯

⑨ 外側毛帯核

⑩ 上オリーブ核

⑪ 内側縦束

⑫ 背側蝸牛神経核

⑬ 下小脳脚

⑭ 腹側蝸牛神経核

⑮ 台形体核

⑯ 内側毛帯

⑰ 台形体交叉

⑱ ラセン神経節

⑲ 蝸牛(前庭器官のうち音の受容器であるコルチ器が存在する部分)

⑳ アブミ骨

㉑ キヌタ骨

㉒ ツチ骨(ツチ骨 + キヌタ骨 + アブミ骨 を耳小骨と呼び、音の振動の圧力はこの耳小骨を伝わる間に鼓膜で受けた時の20~30倍に増幅されると言われている)

㉓ 鼓膜

㉔ 外耳道

㉕ 耳介(いわゆる「耳」)

.

まとめ

聴覚の伝導路に関してまとめました

.

聴覚は特殊感覚の一つ

聴覚情報は振動を感知することで伝わる

聴覚情報は前庭器の中の蝸牛に存在するコルチ器が受容器となり、大脳皮質の聴覚野(=ブロードマン・エリアの41野・42野、横側頭回)へと伝えられる

聴覚の伝導路は中継する神経核が多い、神経核をバイパスして上行する線維が多い、交叉性線維と日交叉性線維とが混在するなど、他の感覚の伝導路と比べて複雑な構造をしているのが特徴

.

他の特殊感覚についても今後まとめたいと思います♪

ありがとうございました!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました