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学生に対してSOAP形式でのレポートを指導するにはどうしたら良いのかな?
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こんな人のための記事です。
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療法士として働いていれば、臨床実習の学生を指導する機会もあることでしょう。
私も、2020年度は9名の学生の主たる指導者を務めました。
養成校によっては、学生の日々のレポートをいわゆる”SOAP形式”でまとめるように指示していることがあります。
これに関して、特にいわゆる”評価実習”に臨む学生にとっては、初めて患者さんに直接手を触れて関わる時期に”SOAP形式”で患者さんの情報をまとめてレポートを作成することは大変なようです。
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しかし、実習指導者の立場からしても、学生には馴染みのない”SOAP形式”で患者さんに関することをまとめることができるように指導することは一苦労です。
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例えば学生が圧迫骨折で回復期リハ病棟入院中の高齢患者に関してデイリーレポートを書いたとして
PINPON先生、レポートの確認をお願いします!!
● S:「起き上がるときに腰が痛い」と患者は訴える。
● O:膝蓋腱反射(右/左)=+/+、アキレス腱反射(右/左)=+/+、触覚正常、痛覚正常
● A:バランス能力が低下。歩行するときにふらつくために歩行器を使用して見守りで歩いている。
● P:下肢の筋力強化を図る。
このようにSOAP形式の個々の項目については記載できていても、全体を通して読むと各項目に繋がりがなくチグハグなものなっている場合があります。
養成校によっては実習前にレポートの書き方について一切指導を行っていないこともありますので、実習指導者がゼロから教えなければならないことも経験します
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そんな訳でこの記事は、
● 臨床実習において学生に対するSOAP形式でのレポートの書き方を指導する際のコツ
をまとめました。
今回は全体編です。
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SOAPとは?
”SOAP”とは、問題指向型医療記録(POMR:Problem Oriented Medical Record)とも呼ばれる診療録(=カルテ)の記載の方法論の一つです。
各医療従事者が勝手気ままに診療録を記載してしまうと、あとで見直したときに記載が不十分で診療録として機能しないということがあり得ます。
そのため、以下の4つ項目を記載することで、診療録として機能させようという方法論です。
● S=Subject:主観的データ。患者の訴えなどを記載する。
● O=Object:客観的データ。医療従事者による検査・測定・観察を記載する。
● A=Assessment:SとOとを統合して評価したものを記載する。
● P=Plan:Aに基いて今後の治療計画を記載する。
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SOAP形式でのレポートの書き方指導のコツ
レポートの主たる話題を絞り込む
私が学生に指導するときには、まず最初に、その日のレポートで患者に関してどんな話題を取り扱うのか絞り込むよう伝えています。
あくまでもデイリーレポートであって、症例報告の資料ではありません。
1日分のレポートで患者に関する情報を網羅することは困難でしょう。
そのため、その患者のリハビリ目的や主疾患・障害像によって、その日のレポートの主たる話題が何かをある程度絞った方がレポート全体をまとめやすくなります。
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今回は圧迫骨折で回復期リハ病棟入院中の高齢患者についてのレポートを記載するので
● 現在のADLの介助量
● 痛みの強さ
● 遅発性神経障害の有無
● バランス能力
● 長期間の入院・活動性低下による廃用性の下肢筋力低下の程度
など、重要な話題がいくつもある中で、その日のレポートでは何について取り扱うのか1つに決めた方が良いと思います。
ちなにみその日ごとに異なる話題を取り扱うことで、後々その情報を統合・整理してその患者の全体像を掴みやすくなるわけです
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レポートの記載はP→S→O→A→Pの順に
レポートを記載するときには、先にその日のレポートにおけるゴール地点をある程度ざっくりと決めた方が良いと思います。
つまり最初にその日のレポートの”P”を下書きするのです。
ちなみに下書きの段階では、敢えて空白部分作ると良いと思います。
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例えば以下のような感じです。
● 今後はADLの中で自立していない〇〇の練習を重点的に行う。
● 今後は痛みを軽減させるよう〇〇する。
● 遅発性神経障害について〇〇する。
● バランス・トレーニングの内容を、〇〇に変更する
● 〇〇を鍛える筋力トレーニング中心に変更する。
“P”の下書きをした後、下書きの空白部分(=〇〇の部分)を埋めるように、収集した情報である”S”と”O”と列挙し、それを統合した”A”を記載します。
そうして再度”P”に至って”A”を踏まえて空白部分を埋めれば、全体として繋がりを持ったレポートを作りやすくなります。
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ちなみに、収集していた”S”と”O”が、その日に考えようとしていた”P”とは全く無関係なものばかりだった、あるいは、”P”を考えるには不足していたということをしばしば経験します。
目的に沿った情報を十分に集めることができていなかったということです。
そのような場合は、翌日以降、目的に沿った情報を集めることを課題とすれば良いのです。
そのような経験も実習では重要かと思います。
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“S”と”O”の数を増やす
SOAP形式の各項目がどのような内容を記載すれば良いか理解できて、かつ、レポート全体としても各項目に一連の繋がりを持って記載できるようになったとしましょう。
あとはひたすらに深く考察するばかりです。
そのためには考察する元となる情報の量が必要です。
つまり”S”と”O”に記載する量をとにかく増やすことです。
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処理しきれずに右往左往してしまうほどの情報の量を集めさせるってのはどうなのかな?
ある療法士からはこのようなご意見を頂戴したことがございます。
しかし、そもそも数多くの情報を収集し、それを整理・統合・解釈できるようになることが学習目標ではないのでしょうか?
そしてそこに到達するまでには、上手く整理しきれないという経験をすることも起こりえます。
直観的思考の記事でも述べたように、ある事柄に対して素早く情報を整理して物事の要点を見出しその対応を考え出すに至るには、膨大な時間を思考の訓練に費やす必要があります。
その過程で、結果的に無駄なことも、誤ったことも思考してしまいます。
しかしそれらに対して、このようなケースではこの情報は重要でこの情報は重要ではないと、一つ一つ判断する経験を積むことで臨床に必要な思考力は養われるのです。
膨大な情報を収集する経験もないままに身に付いてしまったソレは、ただの”当てずっぽう”・”妄想”の類かと思います
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まとめ
臨床実習において学生に対するSOAP形式でのレポートの書き方を指導する際のコツについて解説しました。
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● レポート全体を繋がりのあるものとする前段階として、SOAPの各項目に記載する内容を理解していることが必要
● まず、その日のレポートの主たる話題を絞り込む
● 次に、”P”の下書きを書く
● “P”の下書きには敢えて空白部分を作ると良い
● “P”の下書きの空白部分を埋めるように”S”、”O”、”A”を記載する
● “A”を踏まえて改めて”P”を清書する
● SOAP形式で全体として繋がりを持った記録が出来るようになったら、その後は深く思考できるようにひたすら”S”と”O”の量を増やす
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学生指導の際の参考になったならば嬉しいです♪
ありがとうございました!!
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