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ほとんどの病院で”理念”や”価値観”が掲げられていることでしょう。
病院の”理念”や”価値観”は非常に美しい言葉で多くの医療従事者が賛同するような表現となっています。
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しかし、いざこの”理念”や”価値観”に沿って現場で行動して下さいと言われて、何の戸惑いも迷いもなく取り組める方は珍しいのではないでしょうか。
これは“理念”や”価値観”というものが非常に抽象的な表現にとどまるからです。
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抽象的な表現が悪いという意味ではありません。むしろ抽象的であるべきだとすら思います。
ただし、注意が必要なのは、理念は抽象的であるためにその言葉からイメージする具体的な取り組みは一人ひとりが異なる可能性が高いということです。
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イメージする取り組みがバラバラのままということは、お互いのやろうとしていることがバラバラのままということになります。それでは皆で協力してサポートしあって同じ方向へ進んで行こうという意識を持つことは難しいのではないのでしょうか?
そのような状態では、個人の集まり・烏合の衆で、組織・チームとは呼べないかと思いますし、最悪の場合、お互いがいがみ合うと足の引っ張り合いで一人ひとりを足し合わせたものよりパフォーマンスが低下しかねません。
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逆に理念の下、具体的な取り組みのイメージまで共有できれば、部署の職員がまとまることで、一人ひとりを足し合わせるよりも何倍も大きな力を発揮できる。管理者として部署の職員とともに働く中で、そのような場面に何度も立ち会ってきました。(「管理者冥利に尽きるなぁ」という感じです)
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では、病院の理念を具体的な形あるものとして現場に落とし込むにはどのように考えれば良いのか?
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私が部署の管理者となって最初に取り組んだことは、経営者と部署の職員の双方が納得するような、病院の理念を踏まえた部署の業務目標の設定とそれを達成するための具体的な手段を示すことでした。
今回は私が用いた病院の理念を現場の業務にまで落とし込む考え方を紹介しようと思います。
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理念から現場の業務まで階層構造を意識する
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上の表は病院の理念から個人の身に付ける知識や技術までが、どのような繋がりを持つか示したものです。病院の理念を最上位とした階層構造になっており、以下のような特徴があります。
- 上位の階層がその1つ下位の階層を決定する。
- 上位の階層ほど抽象的であり、それを司る人の思想や思考などソフトの面の影響を強く受ける。
- 下位の階層ほど具体的であり、設備や道具などハードの面の影響を強く受ける。
- 一般的に平社員として入職して最下層の具体的な知識・技術・態度を身に付けるところからスタートし、役職が上がっていくほど上位の階層の役割を担うことを求められる。
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① 病院の理念・価値観
● 病院経営者・理事長の生き方、哲学、価値観を言語化したもの。
● 全職員が共有すべき基本的な価値観であり、行動の指針となるもの。
● 全ての業務の源泉となる。
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② 部署の運営方針・業務目的
● 病院の理念の主旨を踏まえて自部署がどのような役割を担えるかいくつか大まかに考える
● 自部署が担える役割は自部署に所属する職種の専門性に左右される
● 自分たちがサービスを届ける相手はどのような方々なのかも忘れずに
● 病院の理念の主旨を踏まえた自部署の担う大まかな役割=部署の運営方針・業務目的になる
● 部署の運営方針・業務目的は言語化できるもののまだまだ抽象的で概念的
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③ 部署の資源配分
● それぞれの大まかな役割に、それぞれどのくらいの人員、時間、お金を費やすのかを考える
● 優先度の高い役割や、難易度の高い役割には、それだけ多くの人員、時間、お金を費やしたり、あるいは優秀な人に取り組ませたりする
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④ 部署全体の業務目標
● 部署のそれぞれの大まかな役割=概念的で抽象的な業務目的を具体的なものに置き換える
● 目標は数値化できるものが良い
● 数値化できなければ、取り組みのあとに明らかに・確実に実行できたか確認・検証が可能な行動とすると良い
● なお、どの程度の資源を配分できたかによって目指せる目標の高さは決まる
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⑤ 複数チームのプロジェクト
● それぞれの目標=具体的な数値を達成するために複数のチームをどのように連携させるか決める
● 連携するチームにも役割の違いはある
● どのようなチームを連携させるかは目標の性質とチームを構成する人員の専門性や能力の高さを考慮する
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⑥ 単独チームのプロジェクト
● 目標達成をするために連携する各チームが、それぞれどのような役割を担うか決める
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⑦ 個人の知識・技術・態度など
● 各チームが役割を全うできるように、チーム内の各個人がどのような知識・技術・態度を身に付けるかなどを明確にする
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最後に
いかがだったでしょうか?
私は、病院の理念をどのように現場の業務落とし込むかを考える際に、このような階層構造を意識しています。
実際には他にもいくつかの側面から最終的な取り組みを決めていますが、まず最初にこの”縦の流れ”を大事にしています。
部署の管理者としては、まだまだ未熟であり勉強することは山ほどございます。
皆様は病院の理念を形あるものとして現場の業務に落とし込む際に、どのようなことを意識されているでしょうか?
コメントを頂ければ幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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