交絡の予防法~傾向スコアによるマッチング編

臨床研究への道程

備忘録として臨床研究について学んだことを記します

今回は臨床研究における交絡の予防法の1つである傾向スコアによるマッチングについて解説致します

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【復習】交絡とは?

集団がもともと持っているアウトカムの起こしやすさを生み出している要因を「第3の因子」と呼びます。

第3の因子のうち以下の条件を満たすものを特に交絡因子と呼びます。

アウトカムの起こしやすさに影響を与える

2つの集団を比較するときに一方の集団だけに偏って存在する

要因(または介入)の結果生じるもの(中間因子)ではない

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交絡因子が存在すると、比較の質を大きく低下させてしまいます。

つまり、私たちの臨床研究の妨げとなりえます。

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「第3の因子」について学び直したい方はコチラの記事をご覧ください

交絡の定義について学び直したい方はコチラの記事をご覧ください

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交絡の予防法

交絡以外のバイアスを予防する場合は、研究デザインによって特に注意すべきバイアスが異なるため研究デザイン別に予防法を理解する必要がありました。

一方、交絡についてはどの研究デザインにおいても予防法は共通していますので、研究デザインに関わらずこれから紹介する方法で対策します。

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交絡の予防法には

限定

ランダム化(無作為化)

傾向スコアによるマッチング

以上の3つがあります。

今回はこのうちの傾向スコアによるマッチングについて見てみましょ~♪

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傾向スコアとは?

今回は、学術誌・理学療法学の48巻2号(2021年)より
”高齢者肺炎患者に対する入院後48時間以内の離床は日常生活動作能力に影響を与える”
を例に説明致します

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この研究では、65歳以上の高齢者で肺炎と診断されて入院した患者について、入院後48時間以内の離床の可否が、入院前同様のADL能力を維持出来るか否かに影響を与えるのではないかという仮説を検証しています。

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この研究における対象者のデータは以下の通りです

高齢者肺炎患者に対する入院後48 時間以内の離床は日常生活動作能力に影響を与える,理学療法学 48 (2), 189-195, 2021,表1より引用

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少し分かりにくいので早期離床群(入院後48時間以内に離床できた)と離床遅延群(入院後48時間以内に離床できなかった)とで有意差のあった項目を抜き出してみましょう

高齢者肺炎患者に対する入院後48 時間以内の離床は日常生活動作能力に影響を与える,理学療法学 48 (2), 189-195, 2021,表1を引用・改変

早期離床群(入院後48時間以内に離床できた)の特徴として

年齢が若い

心疾患の既往のある者が少ない

炎症の程度が軽症(入院後CRP最高値が低い)

人工呼吸器を装着した者が少ない

抗生剤を投与した日数が少ない

入院前のADL能力が高い

といった特徴が挙げられます。

このまま両群を単純に比較してしまうと、早期離床群において退院時にADL能力が維持出来ていても、それが早期離床による影響なのか、それともその他の交絡因子による影響なのか判別出来ません。

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そこで交絡因子の影響を可能な限り小さくして、両群において早期離床の影響を比較するために傾向スコアが使用されます。

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傾向スコアとは

それぞれの対象者が曝露(この研究では早期離床)がある傾向を確率で表したもの

曝露の有無をアウトカムとするロジスティック回帰分析で得られる予測確率

ロジスティック回帰分析を行う際の説明変数には研究で得た全ての因子を用いる

これが傾向スコアです。

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上の図は理解しやすいように私が適当に作ったものですが、研究で得られた様々な因子を説明変数にして早期離床の可能性は何%なのかを一人ひとりの対象者で算出します。

年齢若い、心疾患なし、CRP低い、人工呼吸装着なし、抗生剤投与期間短い、入院前ADL能力高い → 傾向スコア(早期離床の可能性)が高くなる

年齢高い、心疾患あり、CRP高い、人工呼吸装着あり、抗生剤投与期間長い、入院前ADL能力低い → 傾向スコア(早期離床の可能性)が低くなる

このような具合に全ての対象者にそれぞれ傾向スコアを算出します。

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傾向スコアによるマッチング

引き続き、学術誌・理学療法学の48巻2号(2021年)より
”高齢者肺炎患者に対する入院後48時間以内の離床は日常生活動作能力に影響を与える”
を例に説明致します

先述した通り、研究で得られた因子を説明変数にして早期離床が出来る可能性は何%なのかを表す傾向スコアを全ての対象者について算出します。

傾向スコアを算出したら、早期離床群と離床遅延群とで傾向スコアが一致する者同士でペアを作ります。

即ち、早期離床だった者と離床遅延だった者とで、傾向スコアが一致する者同士のマッチングを行う訳です。

このマッチングは、傾向スコアが一致する者同士がいなくなるまで繰り返します。

ちなみにマッチング出来なかった者は、両群のアウトカム(この場合はADL能力が維持できたか)の比較からは除外されてしまいます。

傾向スコアによるマッチングのイメージ

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例に挙げた研究では傾向スコアによるマッチングを行ったことでこのようになりました♪

高齢者肺炎患者に対する入院後48 時間以内の離床は日常生活動作能力に影響を与える,理学療法学 48 (2), 189-195, 2021,表2より引用

傾向スコアによるマッチングを行うことで
早期離床群と離床遅延群とで要因に差がなくなったことが分かりますね♪

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このように、傾向スコアによるマッチングは観察研究において交絡を予防するために行われます。

観察研究でありながら交絡を予防する可能性を高めてくれる傾向スコアによるマッチングは「疑似ランダム化」とも呼べるでしょう。

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このように、傾向スコアによるマッチングには大きなメリットがある一方で、限界も存在するので注意が必要です。

傾向スコアによるマッチングのメリットと限界については現在勉強中です♪

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最後に

今後も臨床研究に関して学んだことを記していきたいと思います

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ありがとうございました!!

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