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適時調査とか監査とか色々あるけど何が違うの?
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こんな人のための記事です。
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● 適時調査
● 指導
● 監査
病院や診療所など医療機関で働いている方は数年間もお勤めであればこれらの言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
それぞれ保険診療における非常に重要な制度です。
しかし、おしなべて医療専門職は自身の専門分野への興味・関心は高い一方で、法令や制度に関しては疎いものです。
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公的保険下で働く者として、それに関する法令や制度に関して無知のままでいては責任を果たしているとは言いにくいでしょう。
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私もようやく法令や制度について勉強し始めたところで分からないことばかりです
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そんな訳でこの記事は、
● 適時調査、指導、監査の概要
を、まとめました。
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適時調査
目的
適時調査とは、保険医療機関(病院や診療所など)が届け出ている施設基準を満たしているかどうかを調査することを目的としています。
どの保険医療機関に対しても定期的に行われるものなのです。
本来、ペナルティを課すなどネガティブな目的を持ったものではありません。
適時調査が入ると聞いてビビることはありません
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方法
各地方厚生(支)局が各保険医療機関を調査します。
調査対象の保険医療機関には、事前に定められた書類の提出が求められます。
調査は地方厚生(支)局から調査員が保険医療機関を訪問して行われます。
事前提出書類や関係書類の閲覧、院内の視察、保険医療機関職員への聴き取りなどを行って、届け出されている施設基準と業務の実態とが適合しているかを判断します。
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適時調査のその後はどうなるの?
保険医療機関の届け出ている施設基準と業務実態とが適合していると判断されれば、それ以上特に何もありません。
引き続き、届け出ている施設基準に適合した業務を遂行してくださいということになります。
ただし、届け出ている施設基準と業務実態とが不適合と判断された場合は以下のような対応が求められることがあります。
● 改善報告書の提出
● 施設基準の変更や辞退+不適切に請求していた診療報酬の返還
● 施設基準の届け出と業務実態との相違に対して、不正や不当が疑われる場合には個別指導や監査の対象となる
特に最後の個別指導や監査というのは地方厚生(支)局から保険医療機関に対する「あなた方の業務は不正ですよ」というメッセージでもあります。
そのような事態に至らないようにしなければなりません。
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指導
指導とは、保険医療機関が診療報酬を適切に請求することを促すことを目的としています。
指導はいくつかの種類に分かれますが、講習的な意味のものと、警告的な意味のものとがあります。
一口に指導と言っても、その種類によって置かれている状況は随分と変わります
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集団指導
目的
保険医療機関の指定更新の講習や、診療報酬改定時の点数説明などを目的に行われます。
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方法
大きな会場などに保険医療機関から出席者が集まり講習会形式で行われます。
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集団指導のあとはどうなるの?
特に何もありません。
講習が完了すれば「ハイ、お疲れ様でした!」という感じです。
つまり普通の講習会です
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集団的個別指導
目的
前年の診療報酬の金額が一定水準を超える保険医療機関に対する指導です。
ペナルティという訳ではありませんが、「あなたのところは診療報酬の請求金額がかなり高いようですので分かっていると思いますが不当請求にならないように勉強してくださいね」と言った感じです。
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方法
該当する保険医療機関の代表者を集め、個別に面接形式で指導を行います。
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集団的個別指導のあとはどうなるの?
特別に処分を受けるということはありません。
しかし、暗に「診療報酬の請求金額を下げなければ個別指導の対象となりえますよ」というメッセージも含まれているようです。
なお、集団的個別指導は拒否すると個別指導の対象となりえますので注意が必要です。
集団的個別指導から翌年以降、個別指導へ至らないように委縮してしまいます
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個別指導
目的
保険医療機関の診療報酬の請求と業務の実態を調査して、改善点を指導することが目的です。
「改善点がある」ということが前提となっている指導なので、何かしら事実上のものも含めたペナルティを覚悟しなければなりません。
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方法
病院は指導員が病院に訪問して行われます。
診療所や薬局は地方厚生(支)局の事務所や会議室に診療所や薬局の代表者が訪れて行われます。
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個別指導のあとはどうなるの?
先に述べたように、集団指導や集団的個別指導と大きく異なるのは保険医療機関の診療報酬請求に改善点があるという前提に立って行われることがポイントです。
そのため、指導後には適切に請求されなかったと判断されたいくらかの診療報酬の「自主返還」が求められます。
個別指導の前月から遡って1年分の返還を求められるそうです。
このためあらゆる保険医療機関は個別指導に至らないよう注意をしています。
自主返還のため強制力はありませんが、これに応じないことは改善の要求に応じなかったことになります。
すると次は監査を受けることになってしまいます。
自主返還だからと言って拒否せずに応じた方がその後のためになります
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新規個別指導
目的
新たに開業した保険医療機関に対して診療報酬が適切に請求されているかの確認と指導を行います。
開業後、半年から2年以内に指導を受けることが一般的なようです。
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方法
方法そのものは個別指導と同様に、関係書類の閲覧と保険医療機関の代表者との面接形式で行われます。
ただし、指導対象となるレセプトは個別指導よりも少ないようです。
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新規個別指導のあとはどうなるの?
指導対象となったレセプトについては自主返還を求められます。
個別指導との大きな違いは、新規個別指導では直接確認していない時期のレセプトに関しては返還を求められないそうです。
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監査
目的
監査とは、保険医療機関の請求した診療報酬に不正や不当があると判断された場合に、的確に事実関係を調査し、調査結果に基づき処分することを目的としています。
指導と大きく異なる点はペナルティであることです。
不適切に請求した金額を返還するだけにとどまらず、それに加えた罰則を与えられることを覚悟しなければなりません。
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不正請求とは?
詐欺や不法行為にあたるものです。
● その月に受診していない患者の報酬を請求した=架空請求
● その月に1回しか受診していないのに2回以上受診したと報酬を請求した=付増請求
● 運動器疾患リハビリテーション料を算定すべき患者に対して脳血管疾患リハビリテーション料を算定した(不正に高額な報酬に振り替えて請求した)=振替請求
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不当請求とは?
算定要件を満たさないなど、診療報酬請求の妥当性を欠いたものです。
例えば、以下のような行為にあたります。
● カンファレンスなど多職種の合議の場を設けていないのに、リハビリテーション総合実施計画書作成の報酬を請求した
● 患者に対して30分間しか関わっていないのに2単位分の疾患別リハビリテーション料を算定した
● 回復期リハビリテーション病棟入院基本料を算定しながら、回復期専従の療法士が一人も出勤していない日があった
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監査後の措置
行政上の措置
● 注意
● 戒告
● 取消処分:最も重い行政上の措置。5年間、保険医療機関としての業務を禁止され、保険医(公的保険下で働く医師)としての業務を禁止されます。事実上の閉院+医師として廃業に値する重い処分です。
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経済上の措置
診療内容や診療報酬の請求に関して不正や不当があると認定された場合には、原則として5年分の請求した診療報酬を返還することになっています。
また、これに追加して40%の加算金を課せられることもあります。
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まとめ
適時調査、指導、監査の概要をまとめました
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① 適時調査は定期的に行われる施設基準を満たしているかの確認
② 指導は保険医療機関に適切な診療報酬請求を促すことが目的
③ 指導は集団指導、集団的個別指導、個別指導、新規個別指導に分かれる
④ 集団指導と集団的個別指導は講習的なもの
⑤ 個別指導は改善点があることが前提になるので報酬の自主返還を求められる
⑥ 新規個別指導は新規に開業した保険医療機関が受けるもので、指導対象のレセプトのみ自主返還を求められる
⑦ 監査は、事業所の請求した診療報酬に不正や不当があると判断された場合に、的確に事実関係を調査し調査結果に基づき処分することを目的としており、ときに事実上の閉院や医師としての廃業になりうる大変重大なもの
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適時調査、指導、監査、それぞれの理解のお役に立ったならば嬉しいです♪
ありがとうございました!!
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